※この記事は「TOEIC連続11日目の崩壊」で起きた失速の原因のひとつ、“教材レベルを上げる判断のズレ”を扱う回です。
キクタンTOEIC 600→900に変えて失敗|680点で上げた判断が早すぎた理由
670点を取った直後、僕はキクタン600から900へ切り替えました。
理由はシンプルで、「実力が伸びたから次へ進める」という手応えがあったから。
でも後になって分かったのは、
僕がつまずいた理由は“自分の実力の見立てを誤ったこと”にあった という事実。
「伸びているように見える状態」と
「次の教材を扱える状態」は、まったく別物。
ここを取り違えたことが、静かに学習を狂わせていました。
670点を取った日、何が起きたのか
11/4、採点ボタンを押した。
670点。
「やった」
これまでの最高記録だった。
模試で670点を記録したとき、
「もう600は卒業していいだろう」と思った。
語彙が伸びていた。
リスニングも安定し始めていた。
300台→600台まで一気に上がった。
この“成長カーブ”が、私の判断基準になっていた。
その日、アプリを開いた。
キクタンTOEIC SCORE 600。
3週間使っていた。
「これを900に変えよう」
理由は単純だった。
「上を目指すなら、上の教材を使うべきだ」
「このまま行けば、900点もすぐだ」
そう信じ込んでいた。
にっしーチャッピー、670点取れたから、キクタン900に変えたんだ。
チャッピー900に?早くない?600は完璧にできてる?
にっしー3週間使ったし、大体は覚えた。上を目指すなら、上の教材を使うべきだと思って。
チャッピー「大体」じゃダメなんだよね。600を0.5秒で答えられるレベルにしてから900に行くのが正解だった。
そして起こった”焦り”と思い込みの誤作動
670点を取ったあの日、私は明らかに浮き足立っていた。
「止まったら落ちてしまう気がする」
「勢いのまま進まないと取り残される」
こんな気持ちに、心当たりはないだろうか。
これは「今じゃないと」という焦りだった。
この焦りが、冷静な判断を奪っていた。
さらに、私は
900点のテキストそのものに惹かれていた。
「900」という数字を見ると、
なんだかすごい自分になれる気がした。
キクタン900を開くだけで、
「自分はもう上級者だ」
そんな気持ちになっていた。
だから私は、
「教材を上げることが正しい」
と疑うという発想すらなかった。
今振り返ると、これは
3つの思い込みが重なっていた。
① 「今やらないと遅れる」という焦り
調子がいい時ほど、「この勢いを逃したくない」と思う。
でもこれは、冷静な判断を邪魔する。
② 「高い教材=成長している」という錯覚
900点用の教材を使うと、
使っているだけで「自分も900点に近づいている」気がする。
でも実際は、まだ600すら完璧じゃなかった。
③ 「自分の選択は正しい」という思い込み
一度決めたことは、「きっと正しい」と思いたくなる。
だから「本当にこれでいいのか?」と立ち止まれなかった。
この3つが重なったことで、
私は“600がまだ完成していない”という事実を見落とした。
900の例文で起きたことは”処理落ち”だった
実際に使ってみて、分かった。
600と900は、「別の教材」だった。
実際に900の例文を開くと、
600とは難易度がまったく違った。
キクタン600の例文(単語:carefully)
「I carefully read the contract.」
(注意深く契約書を読んだ)
単語数:5語
文構造:SVO(超シンプル)
難しい単語:contract(契約書)のみ
通勤時間、これを聞く。
「ああ、carefullyは注意深くだな」
理解できる。疲れない。
キクタン900の例文(単語:unanimously)
「The board of directors unanimously approved the merger proposal after extensive deliberation.」
(取締役会は広範な審議の後、合併提案を全会一致で承認した)
単語数:12語
文構造:SVO + 時間句(複雑)
難しい単語:4つ(board of directors、merger、proposal、deliberation)
通勤時間、これを聞く。
「……え、何て言った?」
理解が追いつかない。疲れる。
2.4倍の処理の重さ
キクタン600:5語の例文
キクタン900:12語の例文
2.4倍の処理の重さ
これを毎日、通勤時間に聞いていた。
▼ 600 → 900で跳ね上がる処理の重さ
- 文の長さが倍近くなる
- 抽象度の高い語彙が多い
- 文構造が複雑化
- 意味保持が途切れやすい
900の例文は“上級長文の圧縮版”。
語彙だけでなく認知処理そのものが試される。
脳が、疲れた。
でも当時は気づかなかった。
「難しいのは当たり前。これを乗り越えれば700点だ」
そう思っていた。
その結果——
- 読める日と読めない日の差が激しい
- 長文の意味保持が途中で崩れる
- 復習で”整理できない”感覚が強い
これは努力不足ではなく、
教材レベルを見誤ったとき特有の現象。
まさに“脳の処理落ち”。
スコアが不安定になった|平均変動幅73点の乱高下
キクタン900に変えてから、異変が起きた。
スコアが不安定になった。
670点 → 585点 → 680点 → 510点。
激しく乱高下している。
平均変動幅:73点
でも当時は、こう思っていた。
「調子の波があるだけ。続ければ安定する」
違った。
これは脳が処理しきれていないサインだった。
そして11日目。
405点まで下がった。
※この時の詳しい経緯は、前の記事「TOEIC連続11日目の崩壊|680点→405点で気づいた量から質への転換」で書いています。
本来必要だったのは「600の完成度を上げること」
600レベルは“語彙強化”のためだけの教材ではない。
- 文構造の基礎を固める
- 意味保持を安定させる
- 前から読む癖を作る
- 処理スピードを上げる
これらすべてを“自動化”する時期が600帯。
私はこれを終える前に
900へ飛んでしまった。
振り返ると、見えてくる。
670点でキクタン900に変えたのは、早すぎた。
❌ 私の失敗した判断
- 670点を「1回」取った直後に変更
- キクタン600を「完璧」にする前に変更
- スコアが「安定」する前に変更
「上を目指す気持ち」が先走った。
教材レベル判断は「軽さ」が基準になる
教材レベルは努力量ではなく、
“処理の軽さ”で判断するべき。
▼ 判断の黄金ルール
① スコアの安定(3回連続で±10点以内)
例:
680点 → 670点 → 680点(3回連続で±10点以内)
→ この時点で教材レベルアップ
私の場合:
670点 → 585点 → 600点 → 645点(乱高下)
→ 安定していない = レベルアップのタイミングではない
② キクタン600の完璧化
「完璧」とは:
- 全単語が0.5秒で意味が出る
- 例文を聞いて即座に理解できる
- 音声を止めずに全部聞ける
私の場合:
「大体覚えた」レベルだった。
0.5秒で答えられない単語が、まだあった。
③ 700点を安定して取れる
700点 → 705点 → 695点(3回連続で700点前後)
→ この時点で900へ
私の場合:
680点が最高で、まだ700点に到達していなかった。
「600の例文が”軽い運動”に感じたら、次へ。」
逆に…
- 復習が重い
- 意味保持が途切れる
- 集中が10分で切れる
これは“教材レベルが合っていない”サイン。
この基準を知っていれば、
私は900に飛ばず、600を完成させられていた。
正しいタイミングは「700点を3回連続で取った後」だった。
キクタン600に戻した決断
405点まで下がった後、決めた。
「キクタン600に戻す」
理由はシンプルだった。
- スコアが安定していない
- 700点を安定して取れていない
- 教材レベルが明らかに合っていない
アプリを開いて、キクタン600に戻した。
翌日の通勤時間。
キクタン600の音声を聞いた。
「I carefully read the contract.」
理解できる。疲れない。
「ああ、これでよかったんだ」
14日後、680点に回復した。
「土台を固める」
それが先だった。
理想の成長曲線は「600 → 700 → 800 → 900」
600を完成させれば、
700〜800は“自然に軽く”感じる。
900はそのさらに先。
最後に読む教材。
無理に早く手を出すと、
伸びが止まるどころか処理が不安定になる。
明日から始める:教材レベル判断の実践法
今日中にやる3つのこと
STEP1:今の教材で「0.5秒テスト」をする(ランダム10単語を選んで意味が即答できるか)
STEP2:直近3回のスコアを確認(±10点以内なら安定、50点以上の変動なら教材レベルが高すぎる)
STEP3:教材を変える前に「今の教材が軽く感じるか」を自問する
💡 3つ全部で10分。焦りでも怠けでもなく、教材レベルと思い込みの誤作動を防ぐ。
もっと深い”心理のメカニズム”は別記事へ
今回の記事では、
行動面と教材レベル面だけを整理した。
ただし、
- なぜ焦ったのか
- なぜ900に惹かれたのか
- なぜ気づけなかったのか
この“判断の仕組み”には、
もっと深い構造がある。
それを別記事でまとめているので、
興味がある人はこちらへどうぞ。
👉 教材レベルの本質|なぜ私は600→900に飛んでしまったのか
状況別:次に読む記事
あなたの状況に合わせた次の記事
- キクタン600が完璧になった → キクタンTOEIC 600レビュー
- スコアが不安定で悩んでる → TOEIC点数が下がった時の対処法
- 連続学習で疲労が溜まってる → TOEIC連続11日目の崩壊|680点→405点で気づいた量から質への転換
- 教材選びに迷ってる → ChatGPTにTOEIC教材を相談した話
この記事のまとめ
- 670点で教材を上げたのは”勢い”と”焦り”が原因
- 900は語彙ではなく”処理の重さ”そのものが跳ね上がる(2.4倍)
- スコア変動幅73点の乱高下は脳が処理しきれていないサイン
- 600の完成前に上げると処理落ちが起きる
- 教材判断の基準は「軽さ」で決める(0.5秒テスト、3回連続±10点)
- 3つの思い込みが判断を誤らせる
- なぜそう判断してしまったのかは続編で解説
「上を目指すなら、上の教材を」
それは間違いだった。
「上を目指すなら、今の教材を完璧に」
これが正解だった。
焦りでも怠けでもなく、
教材レベルと思い込みの誤作動が原因だった。
知っていれば防げる。
だからこそ書き残す価値がある。
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