入国審査を抜けた後、僕は”電車に乗る方法すら分かっていなかった”。
「Eat Meatballs」事件でなんとかスウェーデンに入れた。次は電車でホテルに向かうだけ。そう思っていた。でもその油断、すぐに粉々になった。
券売機が無い。窓口では売ってない。アプリは路線ごとに違う。日本の常識が、まったく通用しない国だった。
入国審査を抜けて、ホテルに行くだけだと思ってた
入国審査で「Eat Meatballs!」と答えた僕は、心臓バクバクで空港のロビーに出た。
でも、無事に入国できた。それだけで、なんだかホッとしていた。
妻と合流。荷物を受け取る。
「じゃあ、次は電車で中央駅に行くだけだね」
妻がそう言った。僕も、そう思っていた。
だって、事前に調べてあった。ストックホルム・アーランダ空港からストックホルム中央駅まで、鉄道で約40分。簡単じゃん。
でも、この「簡単じゃん」が完全に間違っていた。
券売機が存在しない|日本の常識が通用しない
空港の出口を抜けて、駅に向かう。案内板に「Train」って書いてある方向に歩く。
そこで気づいた。
「券売機がない」
日本だったら、駅に着いたら券売機があって、そこでチケットを買って、改札を通る。これが当たり前。
でも、ここには券売機が無い。
探した。妻と2人で、空港の乗り場エリアを歩き回った。
このとき探したもの
- 券売機(Ticket machine)
- 窓口っぽいカウンター
- 自動発券機みたいなやつ
- 案内板に「Ticket」って書いてあるサイン
→ 全部無かった
構内じゃなくて、空港側の乗り場入口にも無い。どの通路を歩いても、券売機が無い。
「これ、どこで買うの?」
妻も不安そうに周りを見回している。
3種類の鉄道が乗り入れ|どれに乗ればいいか分からない
さらに混乱を深めたのが、鉄道の種類。
空港の乗り場には、3種類の鉄道が乗り入れている。マジで意味わからん。
ストックホルム空港から出ている3種類の鉄道
1. SJ(国鉄)
スウェーデン国鉄。長距離路線。中央駅まで40分。
2. SL(地下鉄・通勤電車)
ストックホルム市内の公共交通。バスとセット。
3. Arlanda Express(空港特急)
空港と中央駅を20分で結ぶ。高い。

しかも、改札が一箇所じゃない。路線ごとに別々のゲートがある。
これ、どれに乗ればいいの?日本の駅なら「中央線」「山手線」みたいに同じ改札を通って、ホームで分かれる。でもここは、入口の時点で3つに分かれてる。誰向けの設計なん…?
3つもあるの?いや、もう無理。日本の”改札ひとつ文化”に戻りたい。
チャッピーに聞いた。スマホを開いて、音声入力で「ストックホルム空港から中央駅まで、どの電車に乗ればいい?」と聞く。
チャッピーが教えてくれた。「SJの国鉄が一番安い。40分くらいで着く。Arlanda Expressは高いけど速い。SLは時間がかかる」
よし、SJだ。
でも、チケットはどこで買うんだ?
窓口で「ここじゃ売ってない」と言われる
券売機が無いなら、窓口で買えばいい。
そう思って、インフォメーションカウンターっぽい場所を探した。
見つけた。「Information」って書いてある。
窓口に向かう。スタッフは若い男性。優しそうな顔をしている。
ここでチケットが買えると思っていた。
「I’d like to buy a ticket.」
言えた。
スタッフが答えた。
「Tickets? Not here. Buy it via the app or Seven-Eleven.」
え?
窓口で言われたこと(翻訳)
「アプリで買うか、セブンイレブンで買ってください」
このとき僕の頭の中
- アプリ?どのアプリ?
- セブンイレブン?空港にあるの?
- 窓口で売ってくれないの??
スタッフは優しく説明してくれた。でも、僕の英語力では全部理解できなかった。
聞き取れたのは、「app」と「Seven-Eleven」だけ。
実は、窓口に行く前にチャッピーに聞いていた。「ストックホルム空港でチケットはどこで買える?」
チャッピーは言った。「窓口で買えますよ」
だから窓口に行った。でも「ここじゃ売ってない」と言われた。
チャッピーに報告した。「窓口で買えないじゃん」
そしたらチャッピー、あっさり手のひらを返してきた。
「そうでしたか。ストックホルムではチケット販売が電子化されていて、窓口で買うことはできません」
知ってたなら最初から言えよ。
AIは便利だけど、現地の情報は現地が正しい。チャッピーを信じすぎると、30分さまようことになる。
よし、じゃあまずセブンイレブンを探そう。
セブンイレブンを探して30分さまよう
妻と2人で、空港の中をぐるぐる歩き回った。
セブンイレブンを探す。
でも、無い。
コンビニはある。でも、セブンじゃない。
カフェの店員に聞けばいい。案内所のスタッフに聞けばいい。分かってる。
でも、まだ「聞く」ことに抵抗があった。
さっき窓口で「I’d like to buy a ticket」と言うので精一杯だった。あれをもう一回やるのか。また英語で話しかけるのか。
聞けば一瞬で解決するのに、その一言が出ない。
結局、聞けないまま歩き回った。
案内板を見る。「Shops」って書いてあるエリアに行く。
また探す。
無い。
セブンイレブンを20〜30分探した結果
- セブン以外のコンビニは山ほどある
- 案内板にも載ってない
- どこを探しても見つからない
- そもそも、空港にセブンイレブンは無いんじゃないか?
妻も疲れてきた。僕も焦ってきた。
そもそも、セブンが見つかったとして、どうやって買うんだ?日本でもコンビニでチケット買うの、操作が複雑で苦手だった。英語でやるなんて無理じゃないか?
「もう、アプリで買おう」
そう決めた。アプリもどれを入れればいいか分からないけど、少なくとも日本語で調べながらできる。
仕方なくアプリを入れる|路線ごとにアプリが違う罠
アプリで買う。
チャッピーに聞いた。「スウェーデンの電車のチケット、アプリで買うにはどうすればいい?」
チャッピーが教えてくれた。「SJのアプリをダウンロードして、そこでチケットを買えます」
さっき「窓口で買える」と言って騙されたばかりだ。半信半疑。
でも、他に選択肢がない。やってみる。
App Storeを開く。「SJ」で検索。
出てきた。「SJ – Biljetter & trafikinfo」(SJ – チケットと運行情報)
ダウンロード。
開く。
でも、ここでまた問題が起きた。
アプリで直面した問題
- 路線ごとにアプリが違う
- SJのアプリ、SLのアプリ、Arlanda Expressのアプリ、全部別
- 最初SJのアプリをダウンロードしたけど、これで合ってるのか不安
- アプリの言語設定が英語になってるけど、それでも分かりにくい
チャッピーにアプリ画面のスクショを送って「これ、どこから買えばいいの?」と聞いた。チャッピーが「Buy ticketを押して、出発地と到着地を入れればOK」と教えてくれた。
でも、もう後には引けない。
時刻表を見る。次の電車まで10分。
よし、それに乗ろう。
10分後の電車に間に合わせる|やっとチケットが買えた
SJのアプリで、出発地と到着地を入力。
「Arlanda C」(空港の駅)から「Stockholm Central」(中央駅)まで。
検索。
出てきた。2人分。チケットを選ぶ。
クレジットカードで支払い。
買えた。

画面に、QRコードが表示された。
「よし!このQRコードで改札を通れば…!」
妻と顔を見合わせる。
「やっと買えたね」
そう言って、僕らは改札に向かった。
このとき、まだ僕らは知らなかった。
この「QRコード」が、次の混乱を生むことを。
やっとチケットを買えた|でもこれはまだスタート地点
券売機が無い。路線が3つある。窓口で売ってない。セブンイレブンが見つからない。アプリの使い方が分からない。
この5つの壁を乗り越えて、やっとチケットを買えた。
でも、これはまだスタート地点。
ここから、改札を通って、電車に乗って、ホテルに行く。
その途中で、またイレギュラーなことが起きる。
それは、次の話。
この体験で気づいたこと
- 全部は聞き取れなかった。でも「app」「Seven-Eleven」だけで動けた
- キクタンで毎日英語を聞いてたから、英語を「聞く」ことへの抵抗感はなかった
- でも「話しかける」のは別。穴埋め問題はやってきたけど、伝えたいことを言う練習はしてなかった
次話予告:第3話「QRコードが反応しない、あと2分で電車が来る」
やっとチケットを買えた。QRコードも表示された。
でも、改札にQRコードをかざしても、反応しない。
後ろに人が並んでいる。
電車は2分後に来る。
焦る僕。
妻も不安そうに見ている。
「Why doesn’t it work?」
そのとき、後ろから声がかけられた。
シリーズ記事
- 第1話:入国審査で「Eat Meatballs」と答えた朝
- 第2話:券売機のない国で、最初の混乱が始まる(この記事)
- 第3話:QRコードが反応しない、あと2分で電車が来る(近日公開)
- 第4話:Where are you fromと初めて言えた日(近日公開)
- 第5話:ミートボールをなめてた(近日公開)
この記事は、今年11月の北欧&ドイツ旅行のうち、ストックホルム滞在(2泊)の実体験をもとに執筆した。TOEIC学習を始めて1ヶ月半後の出来事。旅行の予約自体は学習開始の半年前にしていた。
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